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高級レストランの会計が「2万円」安かった――間違いを指摘しないと「犯罪」になる?
2015年09月26日 09時45分

レストランのウェイターが、会計を「2万円」も安く間違えていた――。東京都内で働くKさん(30代)は先日、ある高級レストランに行った際に、店側の間違いを指摘せずに会計を済ませてしまったことを悩んでいる。

Kさんは、彼女の誕生日を祝うために、奮発して都内の有名イタリアンを予約した。グルメサイトでは、夜の客単価が「1万5000円~2万円」とされているような高級店だ。食事は美味しく、一本2万円もする赤ワインのボトルも入れたので、会計は2人で5万円くらいだろうと予想していた。

ところが、渡された明細には3万1000円としか書かれていない。ウェイターが高級ワインの注文を伝票に記入し忘れていたのだ。Kさんは、そのことに気付いたが、店員に間違いを指摘せず、カードで会計を済ませて店を出た。店員にミスを指摘せず、会計を済ませたKさんの行為は、犯罪になるのだろうか。刑事事件に詳しい坂口靖弁護士に聞いた。

レストランのウェイターが、会計を「2万円」も安く間違えていた――。東京都内で働くKさん(30代)は先日、ある高級レストランに行った際に、店側の間違いを指摘せずに会計を済ませてしまったことを悩んでいる。

Kさんは、彼女の誕生日を祝うために、奮発して都内の有名イタリアンを予約した。グルメサイトでは、夜の客単価が「1万5000円~2万円」とされているような高級店だ。食事は美味しく、一本2万円もする赤ワインのボトルも入れたので、会計は2人で5万円くらいだろうと予想していた。

ところが、渡された明細には3万1000円としか書かれていない。ウェイターが高級ワインの注文を伝票に記入し忘れていたのだ。Kさんは、そのことに気付いたが、店員に間違いを指摘せず、カードで会計を済ませて店を出た。店員にミスを指摘せず、会計を済ませたKさんの行為は、犯罪になるのだろうか。刑事事件に詳しい坂口靖弁護士に聞いた。

●会計が間違っていると告知する義務がある

「Kさんは、詐欺罪に問われる可能性があります」

坂口弁護士はこのように指摘する。Kさんは誰かを積極的にだましたわけではなく、ただ、会計の間違いを黙っていただけだ。それでも詐欺罪になるのだろうか。

「一般に詐欺罪の成立には、(1)財物や利益の移転に関する被害者の処分行為(財物や利益を移転すること)に向けられた欺罔行為(だます行為)(2)錯誤(だまされてしまったこと)による被害者の処分行為、が必要であると考えられています。

そして、だます行為には、『既に相手方が錯誤に陥っていることを知りながら真実を告知しないこと』という『不作為』(何もしないこと)も含まれると考えられています。

もっとも、どんな『不作為』でも、だます行為になるわけではありません。信義則上の告知義務等がある場合(真実を告知する必要がある場合)に限られます。

ただ、取引関係に入った場合などにおいては、実務上では相当に広い範囲で、この告知義務が認められてしまう可能性が高いです」

今回のケースではどうだろうか。

「Kさんは、レストランから飲食の提供を受けるという個別的な取引関係にあり、代金は極めて重要な事実関係と考えられます。飲食料金に関する事情については、信義則上の告知義務が認められるものと考えられます。

したがって、Kさんには、2万円のワイン代金が伝票から抜け落ちていることを店側に指摘しなければならないという『告知義務』があったのに、指摘をしなかったという『不作為』による『欺罔行為』が認められます。

そして、店側はワイン代金が伝票から抜けていることに気がつかないまま、会計を済ませ、Kさんの退店を許しています。この時点で、ワイン代金の支払いを受けることは事実上困難となってしまったと考えられるので、Kさんの不作為の『だます行為』による、錯誤に基づく処分行為があったと考えることができるのです。

今回のケースでは、Kさんは詐欺罪に問われる可能性があると言えます」

●実際に処罰される可能性は低い

では、「なんとなく安いかも」程度の認識しかなかった場合はどうだろう。

「詐欺罪の責任に問われる可能性はかなり低いでしょう。その程度の認識では、行為者が真実を告知することは難しいことから、『不作為』による欺罔行為とは認められないからです。

また、退店した後に会計の間違いに気がついた場合も、詐欺罪は成立しないでしょう。行為者が店側に対し真実を告知しようとしても不可能であり、『欺罔行為』が存在しないからです。

取得したのが『モノ』ではなく、代金支払い義務を免れるという形のない『利益』なので、占有離脱物横領など、その他の犯罪も成立しません。

もっとも、この場合においても、実際の事件では『どの時点でワイン代金が抜け落ちている事実に気がついたか』という点が争点となり、『退店した後に気がついた』との主張は認められず、詐欺罪の責任を問われてしまう可能性も否定できないところです」

今回のようなケースで、実際に処罰される可能性はあるだろうか。

「客が『会計時にどのような認識を持っていたか』という点などについては、よほどの事情がない限り、その認識内容を判断するのは難しいでしょう。現実に立件され、刑事処罰を受ける可能性は、極めて低いと考えられます」

坂口弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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