3751.jpg
小学生の列に車で突っ込んだ女性に「無罪」判決、裁判所はなぜ有罪にできなかった?
2017年12月21日 09時56分

大阪府豊中市で2015年、小学生の列に車で突っ込んで、6人に重軽傷を負わせたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)などの罪に問われた女性の控訴審。大阪高裁(増田耕児裁判長)は12月中旬、検察側の控訴を棄却し、無罪とした1審判決を支持した。

報道によると、女性は2015年5月、睡眠導入剤の服用した翌朝、運転に支障が生じるおそれがあると知りながら、運転して事故を起こした疑いが持たれていた。検察側は、眠気があったのに運転を続けたなどと主張していたが、増田裁判長は「ふらつくなどの居眠り運転の特徴が認められない」と否定した。

さらに、増田裁判長は、女性に何らかの過失があったことは認めながらも、検察側が眠気以外の過失をあげていなかったことから、「検察が訴因を的確に設定すれば、有罪になった可能性が高い」と批判している。

裁判長自身が「有罪になった可能性が高い」と言っているにもかかわらず、有罪にできないのはなぜなのか。冨本和男弁護士に聞いた。

大阪府豊中市で2015年、小学生の列に車で突っ込んで、6人に重軽傷を負わせたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)などの罪に問われた女性の控訴審。大阪高裁(増田耕児裁判長)は12月中旬、検察側の控訴を棄却し、無罪とした1審判決を支持した。

報道によると、女性は2015年5月、睡眠導入剤の服用した翌朝、運転に支障が生じるおそれがあると知りながら、運転して事故を起こした疑いが持たれていた。検察側は、眠気があったのに運転を続けたなどと主張していたが、増田裁判長は「ふらつくなどの居眠り運転の特徴が認められない」と否定した。

さらに、増田裁判長は、女性に何らかの過失があったことは認めながらも、検察側が眠気以外の過失をあげていなかったことから、「検察が訴因を的確に設定すれば、有罪になった可能性が高い」と批判している。

裁判長自身が「有罪になった可能性が高い」と言っているにもかかわらず、有罪にできないのはなぜなのか。冨本和男弁護士に聞いた。

●起訴状に書かれた犯罪事実しか審判できない

「有罪にできないのは、検察官が主張する『訴因』にない犯罪事実について、裁判所が判断できないからです」

冨本弁護士はこう述べる。少しむずかしいが、どういうことだろうか。

「『訴因』とは、検察官が起訴状に記載した具体的な犯罪事実のことをいいます。検察官は、この『訴因』を裁判所に認めてもらうために、主張・立証をおこないます。

一方、この起訴状に記載された『訴因」に対して、被告人・弁護人は、必要な主張・立証(反論など)をおこないます。そして、裁判所はこの『訴因』についてのみ、審判するわけです。

要するに、裁判所には、検察官が起訴状に記載した具体的な犯罪事実だけしか、審判する権利も義務もありません。勝手に『これこれこういう過失があった』と審判することは許されないのです。

今回のケースでも、その結果として、裁判所は女性を無罪にせざるをえなかったわけです」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る