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中国の反日デモで被害を受けた現地日系企業は補償を求めることができるか
2012年09月20日 14時27分

日本政府の尖閣諸島の国有化をきっかけに拡大した中国での反日デモの影響で、現地日系企業の工場の操業停止や小売店の臨時休業が相次いでいる。

中には山東省にあるパナソニックの工場やイオングループのスーパー「ジャスコ」のように、一部の暴徒化したデモ隊に襲撃されるなど破壊行為の対象となってしまった設備や店舗もあり、また上海にあるユニクロではデモ隊による襲撃を恐れたためか、店員が独断で「尖閣諸島は中国の領土」と書かれた張り紙を掲示したことで物議を醸すなど、大きな混乱が続いている状況だ。

そもそも尖閣諸島の国有化は政治・外交問題であり、現地日系企業にデモ隊の矛先が向くのは全くの筋違いといえる。まして破壊行為など言語道断であり、現地日系企業は完全な被害者であることは明白だ。

野田首相はこれらの被害について中国政府側に損害賠償を請求する考えを示したが、各企業の立場からは何かしらの補償を求めることができるのだろうか。堀晴美弁護士に聞いた。

●破壊行為を行なった人物を特定することが難しく、損害賠償請求は不可能か

「デモ隊による破壊行為はいわゆる不法行為ですから、本来、損害賠償請求は破壊行為を行ったデモ隊の人物に対して請求することになります。ただ、現実問題として、破壊行為を行った人物を特定することは容易ではありません。」

「今回、北京大使館に対するデモ行為で身柄を拘束された例がありますが、そのような場合は身柄を拘束された人物に対して、北京大使館の破壊について損害賠償を請求することになりますが、これも現実的にはあまり期待できません。また、日系企業の破壊行為については身柄の拘束もされていませんから、特定の人物に対して、不法行為による損害賠償請求をすることは事実上不可能です。」

●法律上では難しくとも、政治判断による損害賠償は有り得る

「では、中国政府、行政機関に対して損害賠償請求をできるかという問題になりますが、中国政府、行政機関がデモ行為、破壊行為を容認、推奨したという確たる証拠がない限り、中国政府、行政機関に不法行為による損害賠償請求を求めることは難しいと思います。」

「ただこれはあくまで法律レベルの問題で、政治的レベルで、損害賠償をするということは可能です。今回も、中国政府は被害を受けた企業に対して損害賠償をするということを示唆したという報道がありましたが、これも、あくまで政治的レベルでの判断です。」

●日本政府に対しての損害賠償請求は難しい

「また、本来日本政府は海外に在住する日本人を保護する義務がありますから、日系企業に対する破壊行為を防げなかったということで日本政府に対して損害賠償を請求するということも考えられますが、やはり第一にはまず中国政府が損害賠償の責任を負うべきだと考えます。日本政府に対して請求しても、今回の状況では、個々の日系企業の損害賠償までは負えないという判断がなされると思います。」

●尖閣諸島の国有化の引き金をひいた石原都知事および東京都の関係は

日本国内の一部では、尖閣諸島の国有化は東京都の石原都知事が引き金をひいたことであり、被害を受けた現地日系企業は石原都知事または東京都に補償を求めるべきだという意見があるようだが、そのようなことは現実的に可能なのか。

「確かに、今回の一連の騒動は、石原都知事の尖閣諸島取得をめぐる話が引き金となって国有化され、反日デモにつながりましたが、前述のように今回の破壊行為は不法行為として本来破壊行為を行った人物に対して損害賠償を求めることができるだけで、あとは政治レベルで、中国政府、あるいは日本政府が補償することを期待するしかありません。石原都知事の行為は引き金となったに過ぎず、破壊行為との因果関係は希薄で、石原都知事、東京都に対して損害賠償を求めることは難しいと言えるでしょう。」

●被害の補償は日中両政府の政治判断に

中国公安当局は反日デモを禁止し、完全阻止する方針を決めたという報道もあるが、まだ現地日系企業が受けた被害についてどう補償されるのかは明らかになっていない。

堀弁護士の解説の通り、現地日系企業が被害について損害賠償請求を行なうことが現実的に難しいのであれば、被害の補償は日中両政府の政治判断に委ねられることになる。日本国内でも中国側に対する反感が高まっており、適切な補償を含め事態の早期沈静化を図れるか、日本政府の外交力が問われる局面といえそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

日本政府の尖閣諸島の国有化をきっかけに拡大した中国での反日デモの影響で、現地日系企業の工場の操業停止や小売店の臨時休業が相次いでいる。

中には山東省にあるパナソニックの工場やイオングループのスーパー「ジャスコ」のように、一部の暴徒化したデモ隊に襲撃されるなど破壊行為の対象となってしまった設備や店舗もあり、また上海にあるユニクロではデモ隊による襲撃を恐れたためか、店員が独断で「尖閣諸島は中国の領土」と書かれた張り紙を掲示したことで物議を醸すなど、大きな混乱が続いている状況だ。

そもそも尖閣諸島の国有化は政治・外交問題であり、現地日系企業にデモ隊の矛先が向くのは全くの筋違いといえる。まして破壊行為など言語道断であり、現地日系企業は完全な被害者であることは明白だ。

野田首相はこれらの被害について中国政府側に損害賠償を請求する考えを示したが、各企業の立場からは何かしらの補償を求めることができるのだろうか。堀晴美弁護士に聞いた。

●破壊行為を行なった人物を特定することが難しく、損害賠償請求は不可能か

「デモ隊による破壊行為はいわゆる不法行為ですから、本来、損害賠償請求は破壊行為を行ったデモ隊の人物に対して請求することになります。ただ、現実問題として、破壊行為を行った人物を特定することは容易ではありません。」

「今回、北京大使館に対するデモ行為で身柄を拘束された例がありますが、そのような場合は身柄を拘束された人物に対して、北京大使館の破壊について損害賠償を請求することになりますが、これも現実的にはあまり期待できません。また、日系企業の破壊行為については身柄の拘束もされていませんから、特定の人物に対して、不法行為による損害賠償請求をすることは事実上不可能です。」

●法律上では難しくとも、政治判断による損害賠償は有り得る

「では、中国政府、行政機関に対して損害賠償請求をできるかという問題になりますが、中国政府、行政機関がデモ行為、破壊行為を容認、推奨したという確たる証拠がない限り、中国政府、行政機関に不法行為による損害賠償請求を求めることは難しいと思います。」

「ただこれはあくまで法律レベルの問題で、政治的レベルで、損害賠償をするということは可能です。今回も、中国政府は被害を受けた企業に対して損害賠償をするということを示唆したという報道がありましたが、これも、あくまで政治的レベルでの判断です。」

●日本政府に対しての損害賠償請求は難しい

「また、本来日本政府は海外に在住する日本人を保護する義務がありますから、日系企業に対する破壊行為を防げなかったということで日本政府に対して損害賠償を請求するということも考えられますが、やはり第一にはまず中国政府が損害賠償の責任を負うべきだと考えます。日本政府に対して請求しても、今回の状況では、個々の日系企業の損害賠償までは負えないという判断がなされると思います。」

●尖閣諸島の国有化の引き金をひいた石原都知事および東京都の関係は

日本国内の一部では、尖閣諸島の国有化は東京都の石原都知事が引き金をひいたことであり、被害を受けた現地日系企業は石原都知事または東京都に補償を求めるべきだという意見があるようだが、そのようなことは現実的に可能なのか。

「確かに、今回の一連の騒動は、石原都知事の尖閣諸島取得をめぐる話が引き金となって国有化され、反日デモにつながりましたが、前述のように今回の破壊行為は不法行為として本来破壊行為を行った人物に対して損害賠償を求めることができるだけで、あとは政治レベルで、中国政府、あるいは日本政府が補償することを期待するしかありません。石原都知事の行為は引き金となったに過ぎず、破壊行為との因果関係は希薄で、石原都知事、東京都に対して損害賠償を求めることは難しいと言えるでしょう。」

●被害の補償は日中両政府の政治判断に

中国公安当局は反日デモを禁止し、完全阻止する方針を決めたという報道もあるが、まだ現地日系企業が受けた被害についてどう補償されるのかは明らかになっていない。

堀弁護士の解説の通り、現地日系企業が被害について損害賠償請求を行なうことが現実的に難しいのであれば、被害の補償は日中両政府の政治判断に委ねられることになる。日本国内でも中国側に対する反感が高まっており、適切な補償を含め事態の早期沈静化を図れるか、日本政府の外交力が問われる局面といえそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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