この事例の依頼主
男性
相談前の状況
依頼者は、三人兄弟の長男(上から2番目)の方でした。依頼者の父が死亡し、3人兄弟(長女・長男・次男)が相続人となった事案でした。遺言はありませんでした。長男・次男は、被相続人の生前、被相続人の事業を手伝ってきました。被相続人は、生前、長男に対し、被相続人の死後も長男が先祖の祭祀を続けていくこと求めていました。そして、長男による祭祀の費用に充てるため、預貯金や株式等の金融資産は、次男や長女よりも長男に多く相続させる旨の意向を示していました。ところが、被相続人は、一切遺言を作成することなく死亡しました。被相続人の死後、長女は、遺言がない以上、すべての遺産を兄弟3人で均等に分割するべきであると主張し、被相続人の生前の意向に従った分割を主張する長男・次男と意見が真っ向から対立しました。
解決への流れ
事務所の弁護士が長男・次男の代理人に就任し、長女に遺産分割協議を求めたところ、長女にも代理人が就任し、代理人間での協議が行われました。まず、相続財産に含まれる不動産の評価額が争点となりましたが、長男・次男側と長女側がいずれも査定を行った上、協議を継続した結果、双方の主張する金額のほぼ中間の金額で合意に達しました。次に、長男が先祖の祭祀を続けていくことと引き換えに、長男の取り分を他の2名より多くすべきであるという点について、協議を続けました。この点については、なかなか折り合いをつけることができず、協議が平行線で進まないこともありましたが、代理人間の粘り強い交渉の結果、最終的には、長男が次男・長女それぞれよりも1000万円程度多くの相続財産(不動産・金融資産)を取得する内容で遺産分割協議が成立しました。
不動産の評価額については、相続人それぞれが行った査定の内容を、双方の弁護士が緻密に検討し、協議を続けた結果、各相続人も、最終的には双方の主張のほぼ中間の金額とすることに納得を示しました。双方に代理人がつき、冷静かつ理論的に交渉を続けたが故の結果と考えられます。長男の取り分を他の2名の相続人より多くするという点については、論理的には当方の主張を押し通すことは難しいと考えられました。しかし、粘り強く交渉を続けるうちに相手方が早期の解決を望む態度を示すようになり、最終的に双方の妥協により合意に至ることができました。本件では、相続財産に多くの株式が含まれていたところ、相手方は株式のまま相続することを望まず、すべての株式を現金化してから分割することを望んでいました。ところが、株式を売却・現金化するためには、相続人全員が協力して証券会社における手続を進める必要があったため、最終的には、相手方も妥協したものと思われます。この過程においても、双方に代理人がつき、冷静かつ理論的な交渉が行われたことが功を奏したのではないかと思われます。