この事例の依頼主
男性
相談前の状況
婚姻期間中に配偶者である妻が不貞行為を行っていることが発覚。その後妻は子供1人を連れて夫に無断で家を出て行き,依頼者である夫に対して①離婚②婚姻費用の支払い,③子の親権の取得,④年金分割,⑤財産分与,⑥離婚慰謝料の支払を求めて調停の申立てを行ってきた。困り果てた依頼者から相談を受け,調停の対応及び不貞相手の男性に対する慰謝料請求を受任することになった。
解決への流れ
調停手続中に,不貞行為により婚姻関係を破壊した有責性ある配偶者からの婚姻費用について,当該配偶者からの婚姻費用の請求が(子の養育費相当額を除き)権利濫用にあたることを前提に裁判所からも説得をしていただいた。結果,①婚姻費用については養育費相当額しか支払わない②妻側から財産分与を求めない代わりにこちらも不貞についての慰謝料は妻には請求しない,という調停を成立させることができた。
自ら不貞を行い夫婦の婚姻関係を破壊したにも関わらず,それを隠して夫に婚姻関係破綻の責任を押し付け,財産分与や年金分割のみならず,別居後の婚姻費用及び慰謝料まで請求してきたという事案です。当事務所では男性側から離婚相談をお受けすることも多いのですが,不貞をはじめ妻側が原因で婚姻関係が破壊されたにも拘らず,妻側から婚姻費用や離婚給付を満額請求されるというケースは,珍しいことではありません。本件では,依頼者が不貞行為の証拠を逐一残しておいてくれていたため,①妻分の婚姻費用の請求が権利濫用に当たり,養育費相当額に支払いが限定されること,②逆に依頼者から相手方女性に対する慰謝料請求が認められるべきであるという結論が示されました。もっとも,別の事案では,不貞行為の存在まで立証できないと権利濫用とまでは判断ができないと形式的に裁判所で処理されてしまったこともあり,その審理の硬直性に憤った記憶もあります。然るべき判断を裁判所からいただくためには,日頃から証拠収集を怠らないことが重要性だと再認識した事件です。