犯罪・刑事事件の解決事例
#慰謝料・損害賠償 . #人身事故

脳挫傷による記憶障害,性格変化等の高次脳機能障害につき3級3号,嗅覚脱臭につき12級相当の後遺障害を負った被害者について,2500万円の示談提示を,将来介護費等を含め1億円に増額した事例

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松枝 弘樹 弁護士が解決
所属事務所弁護士法人ラグーン黒崎支店
所在地福岡県 北九州市八幡西区

この事例の依頼主

男性

相談前の状況

被害者の属性 50代(男性 会社員)事故の分類 横断歩道を歩行中に,自動車と衝突負傷部位 脳,鼻,目,首,腰等傷病名 脳挫傷,嗅覚脱失,頚椎捻挫,腰椎捻挫等後遺障害等級 併合2級賠償金額 1億被害者が交通事故に遭ったのは,早朝,いつもどおり日課にしていた犬の散歩をしていたときのことでした。歩行していた被害者に気づくことなく対面する車線から右折進行してきた車両に轢かれてしまったのです。被害者は,事故により,脳に重大な損傷を負ってしまいました。何とか一命をとりとめることはできましたが,この日以来,本人と奥様の人生は大きく変わることになったのです。脳外傷による記憶障害,性格変化,注意障害…。ご家族のご苦労は想像を絶するものだったと思います。ラグーンに来られたのは,症状もある程度落ち着き,後遺障害の等級認定も受け,保険会社から示談案を提示されたという段階でした。保険会社の提示した示談金額が妥当であるのか心配になり,ご相談に来られました。当初,他の弁護士にも相談をされていたようですが,専門性を感じなかったために,交通事故分野に注力しているラグーンのホームページを確認されたようです。また,複数の弁護士が対応することで,多角的に事案を検討できるという安心感から,ラグーンにご依頼をいただくことになりました。

解決への流れ

本件は,事故からすでに3年以上経過している事案でした。そこで,まずはこれまでの話し合いの経緯等を確認するために,記録を読み込むことから開始しました。医療機関の記録や既払い金等,資料は膨大なものでしたが,これらをメモにまとめ,他の弁護士とも協議をし,本人との打ち合わせを重ね,加害者側へ請求する内容を検討しました。また,本人やご家族との打ち合わせの中で,今後,裁判になりうることをご説明し,ご家族に対しては,日常生活にどれほどの支障が生じているのか争点となりうるため,できる限り,日々の出来事を日記に残して欲しいとお願いをし,訴訟を視野に入れた対策を検討しました。記録を検討した結果,保険会社の示談案では,将来介護費等の計上もされていなかったことから,当方の主張予定金額との差が著しい状態でした。将来介護費は,症状固定後に,介護をする人が必要な状態である場合に,その費用を賠償するものです。ヘルパー等の職業的に介護をしている方の費用は当然のことながら,ご家族等が無償で介護にあたっている場合にも,介護の程度によって,日額数千円という単位で認められるものです。今後の生活費に一部になるわけですから,将来介護費が発生する事案では,被害者のために,必ず請求をしなければならない損害項目です。当方と保険会社の考えの開きが大きかったため,本人やご家族とも協議のうえ,示談交渉は早期に打ち切り,速やかに訴訟提起に移行することにしました。訴訟提起をしたところ,加害者側は将来介護費の要否を中心に,様々な反論をしてきました。そこで,ラグーンでは被害者が日常生活を送るうえでどれほどの支障が生じているのか,細かく立証をしていくことにしました。交通事故では損害の内容について立証責任を負っているのは被害者です。自賠責の等級認定があるだけで安心してはいけません。被害者やそのご家族と協力をして,実際に生じている支障の内容を具体的に説明し,立証していく必要があります。具体的には,事前にご家族へ準備をお願いしていた日記,被害者と半日行動をともにし,そのときの状況を撮影したビデオ,ご自宅の写真(例えば,火の消し忘れ,電気の点けっぱなし等を防止する目的で,壁に貼付された注意喚起の張り紙の内容等),医師面談・病院同行時の聴き取りメモ等の証拠をもとに主張を組み立てていくことになりました。主張・立証の結果,裁判所から和解案が提示されることになりました。和解案は,将来介護費が発生することを前提としたものでした。最終的には,双方ともに和解案を受け入れることになり,和解により解決をすることになりました。

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松枝 弘樹 弁護士からのコメント

交通事故によってこれまでの日常生活が180度変わってしまうというケースが存在します。ときには人生すら変えてしまうこともあります。今回のケースはまさにそのような事案でした。事故前は会社の役員として精力的に活動していた被害者が,ある日を境に,就労ができなくなり,会社を大きくするという夢を実現する道が絶たれてしまったのです。これほどまでの重大な影響を与えていながら,適正な賠償がなされていないケースが残念ながら存在することを社会全体が認識する必要があると思います。今回のケースでは,解決まで約1年半の期間を要しました。弁護士に相談をしていなければ,1年半の期間を要することなく,すぐに解決していた問題かもしれません。しかし,結果として当初の示談額は全く適正ではなく,適正な賠償金額の4分の1しかなかったのです。主張・立証作業の為に地道な作業を要しました。ご本人やご家族が交通事故に向き合い,真摯に協力をしていただけたから,今回の解決に至ったのだと思います。慰謝料の金額が保険会社の基準と裁判基準で異なることは認知されつつありますが,今回のケースのように,示談案においては将来介護費や症状固定前の付添費等,そもそも損害項目からカットされる場合があることについては未だ社会的に認知されているとはいえないのではないでしょうか。今後の人生のことを考えれば,現行の制度上,被害賠償に限界があることは否めませんが,ご本人やご家族から感謝の言葉を頂戴できたことがせめてもの励みになった印象的な事案でした。