犯罪・刑事事件の解決事例
#遺言 . #遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)

お世話になった人に財産を残したい──死因贈与をめぐって起きた親族とのトラブルを解決

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喜多 啓公 弁護士が解決
所属事務所喜多啓公法律事務所
所在地大阪府 大阪市中央区

この事例の依頼主

女性

相談前の状況

依頼者である女性は当時68歳。長年にわたり親しくしていた男性から、死因贈与契約によって投資信託と株式の譲渡を受けていました。女性は日常的に男性の介護や通院の付き添いを行っており、男性は独身で妻に先立たれ、子どももおらず、疎遠な甥や姪以外に身寄りがない状況でした。男性の遺言の内容は、金融資産である投資信託・株式については女性に死因贈与し、現金については甥姪に相続で分配するというものでした。しかし男性の死後、甥姪から女性に対して金銭管理に関するクレームが入り、通帳と印鑑の引き渡しを求められました。女性はこれに応じたものの、入退院中の金銭管理に関して「使い込みがあったのではないか」と疑念をかけられ、さらに死因贈与契約そのものについても無効を主張される事態に発展しました。女性は介護もしなかった疎遠な親族が急に現れて一方的に責め立ててくる状況に憤りを感じつつも、法律上の効力が失われてしまうのではないかと大きな不安を抱いていました。

解決への流れ

弁護士が介入したことで、女性は親族との直接のやりとりから解放され、弁護士が窓口となって対応することになりました。その後、相手方にも弁護士が就き、正式な代理人を通じた交渉が開始されました。こちらの弁護士は、死因贈与契約の有効性について法的根拠を整理し、遺留分の侵害もないことから契約内容通り履行すべきことを主張しました。遺言が自筆証書であったため、金融機関等において有効性を示すための手続きに課題がありましたが、死因贈与契約の成立や金銭の管理経過を整理し、金銭や動産の引渡し、葬儀費用の支払等を含めた包括的な合意書を作成しました。最終的には、遺言および死因贈与契約の内容に従い、女性が想定された財産を問題なく受け取る形で解決することができました。

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喜多 啓公 弁護士からのコメント

本件で特に困難だったのは、死因贈与契約の有効性を親族に対して交渉によって確保する点でした。自筆証書遺言の場合は有効性に疑義を挟まれるリスクが常に伴います。金融機関への手続きや親族との交渉においても、法的根拠を明確に示す必要があります。このようなトラブルを未然に防ぐには、公正証書による遺言の作成が望ましく、遺言者の意思をできるだけ明確に、かつ第三者が確認できる形で残すことが重要です。また、財産の分配内容について親族の反発が予想されるような場合には、遺留分への配慮も必要です。公正証書遺言を活用する、遺留分に配慮した遺言を設計する、死因贈与契約とあわせて記録を残すなど、今後のトラブルを回避するための準備を検討すべきでしょう。