この事例の依頼主
30代 男性
被害者が高速道路を走行中,後ろから追突の被害に遭い,その場でトラックを停め,恐らく事故状況の確認をしたり,停止表示機材や発煙筒の設置をしようとしていたのか,車外に出たところを,後続車両から跳ねられ,そのまま亡くなられた,というものです。 ご遺族の方は,あまりに突然のことで驚くと共に,一つ目の事故と二つ目の事故の各加害者加入損保から連絡がくるため,ご自身での対応は難しいとして,ご相談にいらっしゃいました。
早速ご依頼いただき,各加害者加入損保に連絡を入れると,一つ目の事故の加害者加入損保は,単なる追突による損害分を超えて被害者の方が亡くなられた分までの賠償をするつもりはない,という主張でした。また,二つ目の事故の加害者加入損保は,加害者もこの事故で昏睡状態となっており,一体どのようにしてこの事故が発生したのかは分からないが,高速道路上にもかかわらず車外に降りていた被害者の方が悪いので,被害者の過失は8割程度になるはずだという主張をしてきたのです。 そのため,詳細な事故態様の立証が困難な本件では,訴訟外でいくら交渉しても,加害者加入損保が,死亡事故についての自賠責保険金上限である3000万円を超える提示を出してくることはありませんでした。被害者の方は,30代の会社員でしたから,この事故さえなければ,まだまだ元気に仕事を続けていたはずです。そういった逸失利益に加えて,被害者の方の慰謝料,ご遺族の方固有の慰謝料,葬儀費用等を加えると,いくら被害者の方に過失がつくとはいえ,とても3000万円では補填しきれるものではありませんでしたから,すぐさま訴訟提起をしました。 訴訟の中で裁判所からは,二つ目の事故の加害者が昏睡状態であり,被害者は亡くなられているので,事故時の状況を詳細に明らかにすることはできないが,高速道路上で車外に出ていたという状況から被害者の方の過失がある程度つくことは致し方ないだろう,ただし,加害者側が主張するような8割などというものではなく,せいぜい3割~4割程度ではないか,という話がなされました。そして,その過失割合を前提とすると,これまでにご遺族の方が受け取られた3000万円では,あまりに賠償額として低すぎるとして,和解に向けた話し合いを続けた結果,これまでの提示の3000万円に更に約3000万円を上乗せして支払うという内容での和解が成立しました。
死亡事故は,被害者の方が亡くなられているため,事故状況の把握が困難であるという点や,損害額が高額化しやすいという点から,加害者加入損保の対応として,他の案件に比べて特に,裁判所が考える適切な賠償額を大きく下回るような提案がされることがあります。大切なご家族を突然の交通事故で亡くされたのに,更に加害者加入損保と賠償額の交渉もしなければならないという状況はあまりに酷ですし,また,賠償実務に詳しい加害者加入損保の担当者と対応に渡り合うというのは,非常に困難です。このようなケースでは,無理なさらず,すぐに専門家にお任せいただければと思います。